AI時代に必要な力

和田 おっしゃる通りで、人間はもう、AIの速度と量には敵いません。となると、若宮さんの指摘の通り、AIとは異なる観点を持ち込まなければ、ダメな時代だということです。

ひとつ例を挙げますと、ポピュラーソングの作曲があります。いままでは、イントロやサビを10個から20個用意して、一番いいものを選んで組み合わせていたそうです。それがヒットの秘訣(ひけつ)だ、なんて話もあったんですが、AI時代はAIがその素材を用意してくれます。10個といわず、1万個用意するのも簡単でしょう。

そうしますとね、作曲家の役割は「いい曲を作る」ということではなく、「いい曲を選ぶ」ということになるかもしれないわけです。

若宮 目利きの力ですね。

和田 日本人にはなぜか強固な強迫観念があって、「手作りがいい」とか「最初から最後まで自分でやるのがいい」と思い込んでいる人がいまだに多いんですが、もうそういう時代じゃないんです。「最後に選ぶ」という感性の勝負になる。

何でも自分でやらなきゃいけない、となると、高齢者は身体的にもハンデがありますが、「選ぶ」ということだけなら、高齢者のハンデはなくなります。

※本稿は、『和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(小学館)の一部を再編集したものです。


和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(著:和田秀樹・若宮正子/小学館)

和田医師が日本の高齢者の「ロールモデル」と敬愛する、世界最高齢プログラマーの若宮さんと緊急対談。超高齢社会ニッポンの大問題や新たな高齢者像について語り合います。