聞こえてくるのは、お湯の煮えるしゅんしゅん、という音だけ(写真提供:photoAC)

 

目の前のことだけに集中して心が晴れる

目の前のお茶を点てることだけに集中すると、心に詰まっていたものが流され、心が落ち着いてきます。そうすると、いままで気づかなかったいろいろなものが見えてくると思います。

以前、銀座のお茶室に、世界を一人で旅しながら、これからどのように生きるべきかを悩んでいた30代のイタリア人女性が茶道体験にいらっしゃいました。

四畳半のお茶室の中には、その女性と私の二人。

聞こえてくるのは、お湯の煮えるしゅんしゅん、という音だけ。

その女性はお茶を召し上がった後、「ここは、なんて平和な世界なんでしょう。私の悩みは小さなものでした。おかげで、心が豊かになりました」と、明るい笑顔で帰っていかれました。

小さな一碗のお抹茶ですが、真心をこめたお茶は人種や言葉の壁などを越えて人の心と心をつなぐことができるのです。

何かに悩んでいる時は、そのことだけに囚われてしまいがちですが、何か別のことに意識を向け集中することで、心が整理されていきます。

その手軽なきっかけのひとつとして「お茶」があるということを、心に留めておいていただけたらと思います。

 

※本稿は、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている――凛として美しい内面の磨き方』(実務教育出版)の一部を再編集したものです

 


「お茶」を学ぶ人だけが知っている――凛として美しい内面の磨き方(著:竹田理絵/実務教育出版)

そろそろ、きちんと中身を磨きたい。
茶道で礼儀作法を学んでみるのも、アリかもしれない。
でも茶道って、なんだか敷居が高そう……。
そんなあなたのための本です。