避難先から2週間前に戻ったというナターシャさん。庭にはロシア軍が撃ち込んだロケット弾の破片が刺さったまま(ノバ・ゾリャ村/撮影◎筆者)

足の不自由なナターシャさんは、松葉杖をつきながら庭先を案内してくれた。ロシア軍が撃ち込んだロケット弾の一部が、地面に4つ、刺さったままだ。これは爆発しない部分だと処理班に説明されたが、触らずそのままにしているという。

隣国のロシアとウクライナが戦争になってしまったことをどう感じているか、私は尋ねてみた。すると彼女は、沈黙のあと深いため息をついた。

「とても難しい質問です。私の父はウクライナ人、母はロシア人です。ロシアには親戚もいます。親戚どうしが争い、殺しあうなんて、複雑な思いです」

そう言って彼女はうつむいた。この戦争が、村や家を壊しただけでなく、自身の生い立ちや人生までも引き裂いてしまったかのようだった。

 

地図製作◎アジアプレス