(写真提供:新潮社)
1984年にコバルト文庫で作家デビューしてからもうすぐ40年。直木賞受賞の『肩ごしの恋人』、柴田錬三郎賞の『愛に似たもの』など、長年恋愛小説を執筆してきた唯川恵さん。もう書き尽くしてしまったという思いと、年齢的なことから、恋愛というテーマから遠ざかっていたと語ります。しかし、知人の《恋バナ》をきっかけに、大人の女性たちの恋愛に興味を持ち、リアルな証言に基づくルポ形式の「恋愛新書」に挑戦したそうで――(構成:内山靖子 写真提供:新潮社)

「本音」で書いた初めてのルポ

作家デビューしてもうすぐ40年。長いこと恋愛小説を書いてきましたが、今回初めてノンフィクションスタイルに挑戦しました。大人の女性たちのリアルな証言に基づく「恋愛新書」です。

36歳から74歳までの12人の女性たちに、実際に経験した恋愛について語ってもらい、それぞれの顛末に関して、私が忌憚のない意見を述べるというルポ形式で書きました。

なぜ今回、小説ではない形で恋愛を書いたのか。実はここ数年、私は恋愛というテーマから遠ざかっていました。

理由は、まず小説という形ではもう書き尽くしてしまったという思いがひとつ。もうひとつには、自分自身が恋愛とは距離を置く年齢になってきたことがあります。今さら私が恋愛小説を書く必要はないのでは、という思いもありました。

そんなとき、古くからの知り合いだったある女性の話を聞く機会があったのです。2人の子どもを抱えて離婚し、30代後半でシングルマザーとなった彼女は、現在40代。離婚当時は、「もうこりごり。恋愛なんて、もう二度としない」と言っていました。

しかし、そんな彼女に最近、また好きな男性ができてしまったというのです。彼の話をする彼女の姿は本当に楽しそうで、まぶしいものでした。