発見の瞬間
小川はミーティング直前、実験の様子を上司である小林に伝えた。
「今朝からIR700を試しているんですけど、うまくいかなくて……」
「うまくいかない?」
「何度やっても死んじゃうんですよ」
「……死ぬって、何が」「がん細胞が、です」
「がん細胞が死ぬって……小川さん、それってどういうことや」
小林は時折、生まれ故郷の西宮の話し言葉が出る。
そそくさとミーティングを終え、小川が顕微鏡室でその現象を小林に見せた時だった。小林が大きな声でこう言った。
「これはおもろいなあ!」
食い入るようにモニターに見入っていた。
「すごい、すごいで! これは治療に使えるんちゃうか!」
光免疫療法が“発見”された瞬間だった。