高齢化社会の問題を五〇年前に看破した名著

大手出版社の新潮社の別館ビルは、別名「恍惚ビル」と呼ばれています。一九七二年に同社から刊行された有吉佐和子さんの長編小説『恍惚の人』が大ベストセラーになり、その収益で建てたと噂されたためです。

この小説は、高齢者の認知症(当時は痴呆症と呼ばれていた)により、介護でたいへんな苦労をする家族の物語です。すぐに森繁久彌さんと高峰秀子さんの主演で映画化もされ、こちらも大ヒットしました。一定以上の年齢の方なら、本や映画は知らなくても、タイトルに見覚え、聞き覚えがあると思います。

今でこそ高齢化と介護は大きな社会問題ですが、そういう時代の到来をすでに五〇年前から予見していたわけです。

実際にはその一〇年ほど前から取材を開始していたそうなので、日本が高度経済成長の真っ只中で絶好調だったころから問題意識を持っていたことになります。おそるべき慧眼だと思います。