長男からも、次男からも、すでに卒母して
子どもは同じ環境で同じように育てても、一人ひとり違います。うちの場合、2人の息子は今、44歳と39歳。長男は堅実で、自立心が強いタイプです。理想どおり自分から親と距離を置くようになり、早めに卒母することができました。今はコツコツと俳優や声優の仕事をしていて、家庭も円満です。
1人目の孫が生まれた後、余計なお世話で「もう1人産んだら? 子どもは宝よ」と言ったことがあります。すると、「僕たちは1人でいい」という答えが返ってきました。でも結果的に2人目も生まれ、本人たちもそれでよかったと思っているようです。
彼は親の七光りをもう少し利用してもいいのにと思うくらい、一切私たちの力を借りようとしません。ときどき、孫を見てほしいとお願いされることはありますが、こちらも孫から元気をもらえるので大歓迎です。
一方で次男は、子どもの頃から大変な読書好きで、周りから「本屋さんになったらどう?」と言われるほどでした。性格的には人懐っこく、ピュアなところがあるんですよ。世間からはいつまでたっても親が過保護にしていると思われているようですが、決してそんなことはありません。私としては、すでに次男からも卒母しています。
次男を産み育てることで、自分も育てられた。彼は私に修行をさせるために生まれてきたのかな、とも思ったりします。おかげでずいぶん強くなりました。
「いつも見ているから」と伝えているつもりです
昨年9月、次男が覚せい剤取締法違反でまた逮捕をされた際、私は「親としては、もう力及ばずの心境です。本人も40手前ですし、自らの責任と覚悟をもって受け止め、そして罪を償って、生き抜いてもらいたいと思います」と申しました。あれは、あらかじめ考えておいたコメントではありません。あの時の正直な心境でした。
事件を知り、驚きもしたし、親としてつらかった。もちろん今でも「なんとか頑張ってほしい」という気持ちはあります。でも、できることに限りがあるのも事実です。
薬物依存症はやっかいな病気で、意志の力だけでは治せません。もちろん専門の病院や施設に行く必要がありますが、それだけでは足りない。その後の環境も大事だし、本人の性格や資質もあるのでしょう。彼も何度も専門施設に入ったのに、残念な結果になりました。
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続きは発売中の『婦人公論』2019年4月9日号にてお読みください。
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