当たり前だと思ってはいけない
薬局で、薬剤師さんが「年末年始は病院が閉まるけど、お薬足りる?大丈夫?ちゃんと先生に連絡してくださいね」と心配してくれたり、病院の受付の人が「あめちゃん食べてね」とあめをくれたり、リハビリのスタッフさんたちがいつも「寒いね。気を付けて帰ってね」「雨の中よく来たね」と声をかけてくれたり。
きっとみんな、それぞれの持ち場で、与えられた役割をまっとうしているのであって、特別なことをしている感覚はないのだと思う。でも、機械的にこなすこともできる中で、心を尽くしてくれたこと、発せられる言葉にこもった気持ちや情・優しさを、受けた側はしっかりと感じ取る。
人の優しさに触れると、すり切れて乾いた心に湿度や温度が戻る。どよんとした気持ちが晴れて、背筋がしゃんとする。うつむいてばかりの日々で、少し前を向こうというエネルギーがわいてくる。
そしてきっと、そういう名前も知らない人たちの善意は、感じ取る意識がなければ、流れていってしまう。その善意を、当たり前だと思ってはいけない。そう思えるようになった今、何気ない人の優しさが、いたくありがたく感じられる。
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