精密検査の結果
「慎太郎」
声をかけるとハッとこちらを向き、立ち上がりました。一瞬、笑ったようでした。よく日に焼けた顔、たくましい体つき、伸びた背筋。この子のどこに病気があるの、と腹立たしいような気持ちになりました。
「大丈夫だからね」
近づいてそう言いますと息子は目を潤ませました。よく見ると、目の周りが腫れています。ああ、泣いたのか。たくさんたくさん、泣いたんだな。
「大丈夫だから」
ほどなくして診察室に呼ばれ、精密検査の結果を3人で一緒に聞きました。
「いったん、野球は忘れましょう」
担当医の言葉に、慎太郎は、少し口を開いた状態で、じっと先生の顔を見つめていました。目が左右に動いて、焦点が定まりません。何か言いたいのでしょうが、なんと言えばいいのか分からずにいる様子です。
先生は続けてこれからの治療法を説明してくださいました。手術を2回行うこと。ひとまず応急処置のための手術、そして開頭での腫瘍摘出手術。
この手術の後、再発させないための抗がん剤治療、放射線治療と続き、退院までに半年ほどの時間を要するだろうと。想像もしたくないような恐ろしい用語が次から次へと飛び出して、私はもう逃げ出したくなっていました。
「慎太郎は」
夫がふいに口を開きました。
「治りますか」
先生は頷きました。
「一緒に治しましょう」