焦燥とSへの不信
再演を繰り返すたび、私の病状は悪化した。当時の私は、介護の仕事をしていた。仕事そのものは好きだったが、酷い不眠のせいでどうしても定時に起き上がれず、欠勤が続いた。このままじゃ、また職を失う。焦燥とSへの不信は、日増しに膨れ上がった。ある日、思い切って彼に現状を伝えた。
「症状が悪化しているように感じる」
それを聞いた彼は、無理やり過去を引きずり出した時と同じ台詞を口にした。
「良い傾向だ。それは、好転反応というんだよ」
「好転反応」とは、何らかの治療を受けた後、一時的に痛みや発熱などの症状が出ることを指す。整体などでよく使われる言葉だが、ここでSが言うそれには、医学的根拠などあるわけがなかった。