被害届を出したのはわずか14%

警察庁が発表する「犯罪統計*1」によれば、2022年に性加害が事件化し、加害者が逮捕・起訴された「強制性交等罪の認知件数」は1655件でした。

そのうち被害者が20代以下のケースが8割以上、10代以下に限っても4割以上を占めていることが明らかになっています。

『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(著:斉藤章佳/幻冬舎新書)

さらに子どもが被害者となる強制性交等罪の認知件数は増加傾向で、0~12歳に関しては、2018年に比べると1.4倍以上にも増えているそうです。

性犯罪は暗数が多い犯罪です。暗数とは、統計に表れている数字と、実際の数字との差のことです。

法務省「第5回犯罪被害実態(暗数)調査*2」(2019年)によると、過去5年間の性的事件において警察に被害届を出した人はわずか14.3%でした。

強制性交等罪の認知件数<『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』より>

つまり8割強の人が性被害を認識していながら、自主的かそうでないかはわかりませんが、被害届を出さずにいるということです。被害届が出されない限り、統計上は被害があったとはカウントされないのです。

前述の「犯罪統計」によると、2022年の0~12歳の子どもの強制性交等の認知件数は216人、強制わいせつは769人で合わせて985人ですが、これもあくまでも氷山の一角と考えるのが妥当だと思われます。

子どもへの性加害においては、加害者が巧妙にグルーミングを行い、「ふたりだけの秘密だよ」などと被害者に口止めをします。

また、子どもは自分が何をされたのかを正確に理解できないことも多く、親など周囲の大人に被害を訴えたり、しかるべき機関につながるまでに時間がかかるケースがとても多いからです。

*1 警察庁「犯罪統計資料(令和4年1〜12月分【確定値】)」
https://www.npa.go.jp/toukei/keiji35/new_hanzai04.htm

*2 法務省「第5回犯罪被害実態(暗数)調査」第2編 犯罪被害状況
https://www.moj.go.jp/content/001316209.pdf