「あまりうれしいことではありませんが、忘れたい記憶こそが脳にとっては重要であったりするのです」(写真提供◎photoAC)

なぜ覚えていないのか

人間の脳には本がいっぱい詰まった図書館1万1000軒分の情報が入るようになっています。つまり記憶には膨大なスペースがあるのですが、肝心なのは使いたい時に使いたい記憶をうまく探せるかどうかです。

たった今経験していることに必要な記憶をコンマ何秒かで探すには、記憶が多過ぎてはいけません。やたらと時間がかかってしまいます。

眠っている間に脳はその日に起きたことを見返し、今後役に立つと思われる記憶だけを保存します。それ以外の記憶は捨てられます。つまり忘れ去られるのです。

ここで脳が保存しておく記憶というのは、何よりも「生きのびるために重要だ」と思われる記憶です。中でも最優先されるのは「危険や脅威」といった強い感情に結びついた記憶です。

子供の頃、ジャングルジムから落ちて指を折った時のことは鮮明に覚えているものですが、その後に買ってもらったアイスクリームのことはとっくに忘れているでしょう。