粒ぞろいの出演陣

山崎はTBS『クロサギ』(2006年)で山下と共演し、気に入ったと伝えられた。だが、芸能界では社交辞令で終わるのが普通。山崎は違い、ほかの作品には滅多に出演しないものの、この作品には出る。山崎自身の凄さは自分の加齢に応じた演技をするところ。若いころの自分をいつまでも追おうとしない。

仇役の神木に扮するディーン・フジオカ(43)はほかの作品では主演級だから、安定感がある。神木はしょっちゅうタップダンスを踊っているが、この演技は結構難しい。一歩間違えたらギャグだ。あるいは悪目立ちしてしまう。そうならないのはディーンがうまいからである。

登坂不動産の社長・登坂寿郎役の草刈正雄(71)も名優だが、その演技が見られるのはNHKの作品くらい。民放の作品は2020年4月の個人視聴率導入により、大半が若者向けになったからだ。この作品は草刈の演技が見られるだけでも貴重だ。

典型的な2枚目俳優からシブイ俳優に転向して久しい。背景には日本テレビ『プロハンター』(1981年)でダブル主演した藤竜也(82)の影響があると見る。

福原は連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年度下半期)でヒロインを経験したが、月下役が一番ハマっているのではないか。真面目で一生懸命だが、ビックリするほど酒癖が悪く、どこか抜けている。キャスティングのセンスが光る。