顧客ファーストが営業マンの神髄
第4にビジネス知識が得られる。前編で得られる知識は不動産関連のものに限られていたが、続編では幅が広がり、パワーアップした。
たとえば、人は会えば会うほど親近感を抱いてくれると説いた。「単純接触効果」である。また、相手に物品を贈ると、自分に有利になる。人は何かをもらうと、自然とお返しをしなくてはならないと思ってしまうからだ。これは「返報性の原理」と称する。物品の贈答が禁じられているビジネスがあるのは、これがあるためだ。
また、セールスなどにおいて「みんながやっている」という言葉は殺し文句になる。人間は多数派と同じ行動をとることに安心感を抱きやすいためである。これを「ハーディング現象」と呼ぶ。株式取引で多くの人が買い、あるいは売りを行うと、雪崩をうちやすいのも同現象に近い。
第5に後味が文句なしにいい。初回、神木との戦いの勝ち負けに躍起になっていた永瀬に対し、登坂が「おまえ、どこ向いているんだ」と、たしなめた。そのとき、永瀬は登坂が何を言いたいのかが分からなかった。
しかし、初回終盤で登坂の言葉の真意に気づく。顧客ファーストが営業マンの神髄。ライバルとの勝ち負けで仕事をするわけではない。田口の不動産売買は神木に奪われたが、田口一家が悲しむのを防げた。永瀬は満足だった。観る側も心が温まった。
山下智久主演『正直不動産』、第4話は「事故物件」。「何のために働くのか」「正直者は生きづらいのか」を問う骨太ドラマ
正直不動産2
ドラマ10『正直不動産2』 【放送予定】 2024年1月9日(火)~3月12日(火) [全10話] 総合テレビ&BSP4K 毎週火曜 よる10:00~10:45 【原作】 大谷アキラ(漫画) 夏原武(原案) 水野光博(脚本) 【脚本】 根本ノンジ 清水匡 木滝りま 【音楽】 佐橋俊彦 【主題歌】 小田和正「so far so good」 【出演】 山下智久 福原遥 市原隼人 泉里香 長谷川忍 ・ 松本若菜 板垣瑞生 伊藤あさひ 財津優太郎 馬場徹 松田悟志/ ディーン・フジオカ ・ 山崎努 ・ 大地真央 / 倉科カナ 高橋克典 草刈正雄 ほか 【制作統括】 黒沢淳(テレパック) 山本敏彦(NHKエンタープライズ) 長谷知記(NHK) 【プロデューサー】 室谷拡(テレパック) 樋渡典英(NHKエンタープライズ) 【演出】 川村泰祐(アンドリーム) 金澤友也(テレパック) 下向英輝(フリー)
高堀冬彦
放送コラムニスト
放送コラムニスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年にスポーツニッポン新聞社入社し、放送記者クラブに所属。放送界のニュース全般やドラマレビューなどを書く。2010年の退社後は「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。