終戦から一年たっても、まだ世の中は混乱していました(写真提供:Photo AC)
2018年に放送されたNHK連続テレビ小説『まんぷく』がNHK BSとBSプレミアム4Kで再放送され、再び話題となっています。『まんぷく』のヒロイン・福子のモデルとなった、安藤仁子さんは一体どのような人物だったのでしょうか。安藤百福発明記念館横浜で館長を務めた筒井之隆さんが、親族らへのインタビューや手帳や日記から明らかになった安藤さんの人物像を紹介するのが当連載。今回のテーマは「戦火避け疎開 ~混乱の時代を生きのびる」です。

三つの約束

仁子は結婚する時、母須磨を一人置いていくわけにいきませんでした。ほかに世話をしてくれる余裕のある親戚がなかったのです。また仁子は「もう母には絶対に食べ物の苦労をさせない」と心に誓っていました。結局、須磨は仁子の思いどおり、百福との家庭に同居することになりました。

一方、百福には先妻の子がいました。男の子で名前は宏寿(ひろとし)と言います。

「わたしは母を、主人は息子を、それぞれ引き取る。お互いに心にブレーキがあり良いとの事」(仁子の残した手帳)

新婚なのに、家は四人家族になりました。

百福は仁子に三つの約束をしました。

一つ、私が仕事をする。
二つ、家庭は任せる。
三つ、食べるものには苦労させない。

そして、紆余曲折はあったものの、生涯、この約束を守り通しました。