お金がないことの切なさを痛感しました

実は当時のことを私はあまりよく覚えていません。

ショックが大きすぎたことと、少しでもお金をつくるために売れるものは全部売るなど、1か月以内に引っ越しをするためにしなければならないことが多すぎて、自分に考えること、覚えることをあえてストップさせたのではないかと思います。

その上、私は生来の見えっ張りときています。どんなにつらいことがあっても顔色一つ変えず、「私は平気よ」という顔をしていたいというのもありました。イヤなやつですよね……。

でもそんなかっこつけのイヤなやつだからこそ、人生最大の局面、それも天国から地獄に突き落とされるような局面を、なんとかやり過ごせたのではないかという気もするのです。

そして自分の弱さを認めることが苦手で、どんなことでも乗り越えられる人間だと思っていたい私は、あえてつらい感情に蓋をしてきたのではないかと思うのです。

今だから正直に言えます。あのときは本当につらかったです。

もの心ついてからお金の苦労を一度もしてこなかった私にとって、毎月当然のものとして入ってきていたお金が入ってこなくなるというのは、恐怖以外の何ものでもありませんでした。

もう49歳にもなっていたのですが、お金について、まったく自立できていないことに気づかされたのです。

お金がなくなるということは、頭ではわかっていたつもりです。

今まで住んでいた広々としたマンションに住めなくなるとか、車を手放さなくてはならなくなるとか……真剣に取り組んでいたつもりではありましたが、副収入のつもりでいた整体の仕事を生活のためにしていかなくてはならなくなる。

堅実な生活をしている人なら当然知っているはずのことを、私はまったく知らなかったのです。

実家が倒産したあとは、ただがむしゃらに前に進むしかありませんでした。整体院に勤めるかたわら、すでに個人でお客様の施術もしていたのですが、それこそ子どもたちの用事があるとき以外、ほとんどすべての時間を仕事に捧げていたと言っても過言ではありません。