百福は朝の五時に起きては小屋に入り、夜中の一時、二時まで麺を打つ作業に没頭しました(写真提供:Photo AC)
2018年に放送されたNHK連続テレビ小説『まんぷく』がNHK BSとBSプレミアム4Kで再放送され、再び話題となっています。『まんぷく』のヒロイン・福子のモデルとなった、安藤仁子さんは一体どのような人物だったのでしょうか。安藤百福発明記念館横浜で館長を務めた筒井之隆さんが、親族らへのインタビューや手帳や日記から明らかになった安藤さんの人物像を紹介するのが当連載。今回のテーマは「即席麺の開発 ~仁子の天ぷらがヒント」です。

「日本一のラーメン屋になる」

百福が理事長を務めた信用組合は倒産しました。

泉大津の時と同じように、百福はまたしても財産を失いました。

身辺は急に静かになりました。

池田市呉服町の自宅には訪れる人もありません。

「責任を持てない仕事は、いくら頼まれても軽々に引き受けてはいけないのだ」

百福は毎日、迷惑をかけた預金者一人一人の顔を思い起こしては、後悔に身をこがしました。家族のためにも、これからどうしていけばよいのか。頭の中はもうそれでいっぱいでした。

「え、ラーメン屋さんをなさるんですか」

仁子は思わず耳を疑いました。

「ラーメンといっても、いつでも、すぐに食べられるラーメンだ」

百福は自信ありげに言いました。

いったん思いついたら、もうこの人には何を言ってもだめ。

仁子は、百福の性格をよく承知していました。だから、いつも黙って後をついて行くだけ。それが仁子のやり方です。

「日本一のラーメン屋になる」

百福の言葉に、仁子は安心したのです。