病気なのだから変えられない
ーー認知症の疑いがあるので物忘れ外来やメモリークリニックに連れて行きたいけれど、本人に持ちかけると拒む。連れて行く家族の側も、まだ認知症ではないのではという気持ちを捨てきれない。悩んでいる人は多いのではないだろうか。
車を大破させる事故を起こした数日後、父は寝室で倒れ、救急車で病院に運ばれました。異常はありませんでしたが、血圧が急に上がったのが原因のようです。そこで、内科に連れていく機会に認知症の検査も受けさせたい、と考えました。
地域包括支援センターの人に相談すると、内科と神経内科があるクリニックを紹介してくれました。クリニックで、MRIによる頭部撮影と長谷川式認知症スケールの結果を総合して、認知症と正式に診断されました。
親をどうやって認知症専門の病院に連れていくかで困っている方がおられます。私の場合、「睡眠導入剤をもらいに行く」を理由にしました。「物忘れ」を全面に出した病院でないこともよかったのかもしれません。
介護保険の認定にもかかわるので、機会を逃さず早く診断を受けてもらうことです。父の介護保険の認定は要支援1だったのが、認知症と診断された後、要介護1となりました。
「認知症」と専門医に言われて、私は気が楽になりました。それまで自分本位の父と喧嘩をしたり、父の言動に傷つけられたりして、優しくモダンな“パパ”に戻ってほしいと願っていました。でも、病気なのだから変えられない。「合った対応をしよう」と考えればよいのではと、ある種希望を持つことができたのです。