変わる努力は尊いもの
おっパンでは古い価値観を持った人を一方的に断罪するのではなく、誰もが新たな価値観に戸惑い、自分が持つ価値観を守りたくなる気持ちに理解を示すシーンもある。
誠の部下・原西匠(井上拓哉)のセリフにこんなものがある。
「俺、室長(誠のこと)がわからずやだった時、あの時思ってたことがあるんです。室長にとって、あの古臭い価値観は、俺にとってのビースケくんなんだろうなって。俺にとってビースケくんは、自分をぎゅーって守ってくれる存在です」
ちなみに、ビースケくんとは、原西が身に着けているメンズブラのことだ。
「だって知らない価値観の中で裸で出ていくのって怖いじゃないですか。俺は間違ってないって態度の室長見てて、あれ、なんか俺と似てるなぁ、不安なんだろうなってどこかで思ってました」
時代が目まぐるしく変わり、自分が形成してきた価値観が古いと切り捨てられる。誰だって戸惑うし、自分の正しさを主張したくもなるのだろう。筆者は今、若者と言われる立場だが、既に今の10代とは価値観や常識が違うと感じる。自分が中年になった時、新たな価値観に適応できるだろうか、と思ったりもする。
時代の変化はいいものばかりではない。でも、少なくとも、ハラスメントという概念が生まれ、名付けられることで、いままで受け流されてきたことが明確にダメだという基準が示された。その基準や運用にまだまだ改善の余地はあれ、その点では時代は確実にいい方向に向かっている。
おっパンが提示したように、アップデートしていくのは、誰かを傷つけないためでもある。人はいつからでも変わることができるし、変わる努力は尊いものなのだと思う。