これから伸びる沿線
本線といずみ野線のみ、乗り入れもないという手堅い私鉄が、以前の相鉄だったが、転機がやってくる。JR東日本や東急への乗り入れの計画が決まったことだ。
それまで、都心へ行くのに横浜駅での乗り換えを必要としたことが、沿線ビジネスの主体としての相鉄グループの弱点となっていた。
JR東日本や東急との直通が決まり、東急との直通は東京メトロ副都心線や南北線、都営三田線とも直通するということで、沿線の価値も向上することが期待された。
相鉄・JR直通線が開業したのは2019(令和元)年11月、相鉄・東急直通線が開業したのが2023(令和5)年3月である。
相鉄新横浜線ができたことで、相鉄は大きく変わった。
これを見越して、相鉄はグループを挙げて「沿線力」を強化した。「選ばれる沿線」を相鉄も掲げるようになり、イメージアップのための施策に取り組むようになった。
その代表が、「デザインブランドアッププロジェクト」である。
「ヨコハマネイビーブルー」をイメージカラーとし、それを基調に車両だけではなく、駅などのデザインや表示物もより洗練されたものに変えていった。
この「ヨコハマネイビーブルー」は、深みのある青色で、存在感を強く示せる色となっている。
JR東日本に直通する12000系と、東急に直通する20000系(東京メトロ副都心線方面に向かう)や21000系(東京メトロ南北線や都営三田線方面に向かう)に採用され、従来の車両も塗色変更が進みつつある。
相鉄とはかくあるもの、という存在感を乗り入れ先においても示し、相鉄に興味を持ってもらい、沿線に住んでもらうというのが基本的な考え方となっている。
これまでは、都心から離れた郊外にある環境の整った住宅地、というのが相鉄の沿線だった。
都心直通にともない、大手私鉄としての存在感を高め、「選ばれる沿線」としての価値向上に力を入れている。
これから伸びる沿線は、相鉄沿線ではないだろうか。
※本稿は、『関東の私鉄沿線格差: 東急 東武 小田急 京王 西武 京急 京成 相鉄』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
『関東の私鉄沿線格差: 東急 東武 小田急 京王 西武 京急 京成 相鉄』(著:小林拓矢/河出書房新社)
関東8大私鉄の「沿線力」を徹底比較。住みやすさ、行政サービス、将来性、ブランド力、天災への強さなど、さまざまな視点から、知っているようで知らない「真の評価」を明らかにする!