いざ見つかったら「良かったね!」と

ソファの後ろや仏壇の中など、意外な場所に隠してしまうこともありますが、そこであなたが見つけてしまうと、「ほら、やっぱり。あなたが盗って隠したんでしょ!」と逆効果になりかねません。

「お母さん、ちょっとこのあたりを探してみて」などと上手に誘導して、本人が見つける流れを演出してあげるのがベストです。

探しながら、探し物を見つけたあとの話や、昔の思い出話をしたり、しばらく探してから、お茶やおやつに誘ったりして、注意を別のものに向けるのもいいですね。そうするうちになくし物のことを忘れてしまい、落ち着くこともあります。

そして、いざ見つかったら、「良かったね!」と一緒に喜びましょう。

考えてみれば、これは、子どもの頃に大切なおもちゃをなくして、お母さんに一緒に探してもらっていたシチュエーションを逆転させたようなものです。

「あら! どうしたの? なくしちゃったの? 大変! じゃあ一緒に探そう」と寄り添って、二人で見つけるストーリーを見せてあげてください。

そういえば、2カ月後にまたオンラインで集まったとき、平井さんの次女さんは「子育てをしているような感覚で、また母と向き合えるようになりました」と言って、じつに穏やかな表情を浮かべていましたっけ。

※本稿は、『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』(アスコム)の一部を再編集したものです。

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認知症予防の最前線。脳を衰えさせない習慣は3つ。運動、知的活動、コミュニケーション

ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ(著:川畑智、監修:内野勝行、マンガ:中川いさみ/アスコム)

認知症の人とともに生きる上で何より大切なのは、「笑う」こと。認知症介護の中にだって、おたがいに大笑いできる瞬間や、日々の介護の中で心が通じ合う瞬間、心がほっこりと温かくなる瞬間が必ずあります。そんな「晴れ間」を作るための考え方や方法を、著者が経験したエピソードととともに一冊にまとめました。漫画家・中川いさみ先生のクスっと笑えて、じんわり心が温まるマンガとともに、お読みください。