「物盗られ妄想」に直面したら

実際、長女さんは、献身的に介護をしてくれる次女さんへの感謝の言葉を平井さんがたびたび口にするのを聞いていました。

私の説明と、姉から母の感謝の言葉を聞かされた次女さんは、
「嫌われているとばかり思っていたのに、まさか信頼されていたとは……」
と、安堵の表情とともに涙を流していました。

「物盗られ妄想」に直面した場合、まずは1回、深呼吸。

「自分が信頼されているからこそだ」ということを再確認してください。

そして、本人にかける言葉は「それは大変だね」「困ったね」です。
否定も肯定もせず、パニックになっている気持ちそのものに寄り添います。

そのうえで「一緒に探そうか?」と、なくし物を一緒に探してあげてください。
最後にどこで使ったか、いつもどこに片づけるか、ないことにいつ気づいたか、なにをしようと思っていたかを聞いてあげましょう。

うなずきや相づちを打ち、全面的に協力するという態度を示します。

『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』より