※「ロコモティブシンドローム」の略。運動器症候群
90歳からでも筋肉は増やせる
講演会などで『婦人公論』世代の方に会うと、みなさん、「加齢とともに疲れやすくなった」という話をなさいます。人間の筋肉は20歳を過ぎると年に約1%ずつ減少しますから、何も対策を講じなければ、60代を迎える頃には4割近い筋肉を失うことになる。以前より少ない量の筋肉で体を動かせば、疲れを感じるのも当然といえるでしょう。
疲れるから体を休ませる、すると活動量が減ってさらに筋肉が衰えるという悪循環に陥り、その先に待っているのは「寝たきり」生活です。一生動ける体でいるためには筋トレを習慣化してほしいのですが、「年齢的に筋トレは負担が大きい」と考える人は少なくありません。
実際は、何歳になっても筋トレはできるし、続ければ確実に効果が表れます。病気で寝たきりになった私の祖母は98歳でトレーニングを始めて、毎日続けたところ、103歳で40回のスクワットができるまでになりました。祖母は104歳のとき老衰のため亡くなりましたが、死の直前まで自分の足で歩き、認知症を発症することもなかったのです。
筋力を高めるには時間がかかります。WHO(世界保健機関)は成人に対して週150分以上の運動を推奨していて、筋トレも毎日30分~1時間程度行うのが理想。とはいえ、運動習慣のない人がいきなり長時間の筋トレを実践するのは難しいですよね。
そこでまず初めに私がおすすめするのは、日常生活の中に筋力をアップする動きを組み込むこと。たとえば、テレビを観ながら膝を曲げ伸ばしする、買い物に出かけたらなるべく階段を使って足腰を鍛える。そうやって1日の中で運動時間を積み上げることから始めれば、筋肉は確実についていきます。
正しく体を動かすには、筋力とともにバランス感覚や柔軟性も必要です。この3つを養うトレーニングを紹介するので、最低3ヵ月を目標に続けましょう。体が動きやすくなった、疲れにくくなったと感じるときが必ず訪れます。