自分のダメなところに気づいたという高齢男性
この本は電子書籍として出版され、アマゾンPODでも販売されているが、私が札幌在住であることから、北海道の紀伊國屋書店が単行本として店頭で販売してくれている。本の発刊記念のトークショーを、3月の上旬に札幌本店で開催した。
マイクテストをしていると、まだ開始の1時間前なのに最前列の真ん中に座っている高齢の男性がいた。聞けば男性は日頃、本を買いに町の中心部に出かけるのを楽しみにしているそうだ。
もうすでに「オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく」をお読みになり、著者の私に聞きたいことがいくつかあったらしく、本には付箋がついていた。
3月上旬の札幌はまだ冷え込む日が多い。歩道の雪は凍ってツルツルで、年齢に限らず、滑って転んで骨折する人もいる。その男性は80歳で、スキーのストックと同じ形状の杖を両手に持って、転ばぬように注意しながら歩いてきたという。彼はトークショーの最後に、心のうちを話してくれた。
「まるで、自分のことを言われているようで、本を読んでショックを受けました。自分が何気なく言っていることや、年寄りの考え方が、家族に負担をかけているとは思っていなかったので、大いに反省しました。自分が変わらなければならない。本を読んでこれほど自分のこととして捉えたのは、初めての経験でした」
トークショーをしたおかげで、我が身を振り返りながら読書する人に出会え、大変ありがたい経験をした。私はその男性に最後に言った。
「ご自分をそれだけ冷静に見つめられるのは、素晴らしいことだと思います。私のほうこそ勉強になりました。ありがとうございます」