厚生労働省が行った「令和4年 国民生活基礎調査」によると、約46%もの人が「悩みやストレスを抱えている」と答えたそう。なかなか解決できない悩みは、「もうひとりの自分」が、心を守るために無意識に引き起こしているかもしれません。公認心理師・橋本翔太さんは、その心の防衛機能を「ナイト(騎士)くん」と名づけました。今回は、自著『わたしがわたしを助けに行こう ―自分を救う心理学―』より、つらい悩みに隠されたナイトくんの目的を解き明かします。
「時間がない」に隠された理由1 忙しくない自分には価値がない
心理セッションを通して見えてきた例として、「時間に追われていると余計なことを考えなくてすむ」ということに気づいた方がいます。
「忙しくしていたら、不安や焦燥、ストレスを感じなくてすむ」
「時間ができてしまったら、それら余計なことを考えてしまい落ち込んでしまう」
こういう人は意外といます。
時間に追われるのがイヤだったのに、じつは時間に追われている方が精神的には楽だったのです。
これが行き過ぎるとワーカホリックや、常に交感神経が優位で「休息ができない」「眠れない」といった、自律神経の問題にエスカレートする人もいます。
あるいは、「忙しくしていないと、自分には価値がない、存在している意味がない」というような感覚が湧いてしまうことに気づいた人もいます。
特に幼少期から、何かができたとき(テストでいい点をとる、お手伝いをするなど)はほめられるけれど、何もしていない状態(昼寝している、ダラダラしているなど)をいつも責められてきた人の場合。
常に何か有意義なことをしていないと、ここに存在してはいけない、居場所がない、もっというと「生きていてはいけない。生きている価値がない」という感覚が湧いてきてしまいがちです。
時間に追われなくなると、「自分には価値がない」「そんな自分に生きている意味はない」という感覚が湧いてきてしまうことをナイトくんが知っているのです。
あえて時間に追われるように、あれもこれも抱えるように仕向けてくれているケースも多いです。