レトロなものがたくさんある商店街(写真提供◎ヒオカさん 以下同)
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第65回は「思い切って出かけた人生初の旅行で待っていた一期一会」です。

人生で初めての旅行

先日、親友の結婚式で四国を訪れた。思えば、修学旅行やゼミの合宿等以外で、プライベートの「旅行」は人生で一度も経験がない。仕事で出張に行くことはあったが、いつもとんぼ返りで、観光する余裕はなかった。今回が人生で初めての旅行、と言えるのかもしれない。

旅行は私にとってはめちゃくちゃハードルが高い。もちろん家族で旅行には行ったことがない。祖母のお葬式にも交通費がなくて行けなかったくらいだ。大学の友達に海外に卒業旅行に行かないかと誘われたが、そんなお金もなかった。

始発で空港に向かう

旅行をするためには、交通費や宿泊代がかかるのはもちろん、その期間休まなければ働けた分の給料のマイナスだって考えなければならない。とんでもない贅沢なのだ。

一度も旅行に行ったことがない、と友達に言うと、「コスパが悪いから?」と聞かれた。「シンプルにお金がないから」と言いたかったが、喉で耐えた。周囲の人たちはカジュアルに旅行に出かけている。お金がないから旅行に行けない、というのが想像できないのかもしれない。

今まで結婚式に招待されたことはあったが、当時経済的にとても苦しかったので、泣く泣くお断りした。しかし、今回は、どうしても行きたい理由があった。結婚する友達が、恩人だったからだ。彼女とは中高が一緒だった。パーンと、太陽のように明るく、細かいことを気にしない性格の彼女は、クラスの1軍にいるような子たちとも対等に関わったし、クラスの端にいるような子にも平等に接した。