24年4月より放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。伊藤沙莉さん演じる主人公・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんです。先駆者であり続けた彼女が人生を賭けて成し遂げようとしたこととは?当連載にて東京理科大学・神野潔先生がその生涯を辿ります。先生いわく「修習のあいだ、嘉子も自然と遠慮しながら意見を述べることが続いた」そうで――。
弁護士試補時代の体験
高等試験司法科に合格すると、弁護士試補としての1年半の修習が待っていました。
嘉子は第二東京弁護士会に配属されましたが(弁護士会というのは、弁護士法に基づき、地方裁判所の管轄区域ごとに一つ設置される団体ですが、東京だけ例外的に複数の弁護士会があります。強制加入団体で、弁護士は必ず所属しなくてはいけません)、当時の試補は無給で(裁判官、検察官になるための司法官試補は給与の支給がありました)、修習のために弁護士会に対して国から交付される経費の一部を、手当としてもらえる仕組みになっていました。
とはいえそれはかなり安く、当時の私立大学出身者の初任給が月45円くらいのこの時代に、嘉子が受け取っていた月の手当は20円程度でした。
戦前は弁護士の地位が裁判官・検察官と比べて低く、このようなところにも露骨な差が設けられていました。