赤塚一家の充実した私生活

赤塚は、本業の漫画に加えテレビ出演なども増え、忙しくなるばかりだった。

私生活も充実していた。

『赤塚不二夫 伝 天才バカボンと三人の母』(著:山口孝/内外出版社)

66年、念願だったベンツ(220セダン)を買った。400万円だったがその程度の余裕はすでにあった。

もっとも、忙しい中でいつ取ったのか、登茂子はすでに免許を持っていたが、赤塚が免許を取ったのは車を買ってしばらくしてから、31歳になってからだった。

それまでは、登茂子の運転するベンツの後ろの席で、りえ子のオムツを替えていたそうだ。

免許を取った後、当時日本に数台しかなかったベンツ450SLCクーペを買った。「女にモテる。ステータスにもなった」と赤塚は自慢した。

登茂子は、とにかく行動的だった。カメラも好きで、娘のりえ子の成長と父親・フジオの写真を撮りまくっていた。

登茂子が述懐する。

3人で九州旅行に行ったときのこと。例によって、シャッターを切り続ける登茂子に、赤塚が、「フィルムがもったいない」と待ったをかけた。

登茂子はすかさず、「あなたの飲み代に比べれば、どうってことないでしょ」と切り返した。

ギャフンとした赤塚は、「3秒に1枚撮りなさい」と、慌てて言った。