自身が20年近く介護をした経験もあって、ライフワークの一つとして介護の現場で働く人の声を集めてきた。その取材先として一昨年の11月に訪れたのが、ゆいま~る那須だったという。

「これまでも全国でユニークな高齢者施設を手がけてきたゆいま~るが、リゾート地の那須でさらに個性的なサ高住を2010年からスタートしたと聞いて。一度は取材してみなければと思ったんです」

ゆいま~る那須は、オープンの経緯からユニークだ。オープンの2年前、そこがまだ雑木林だった頃から入居希望者がバスツアーで何度も訪れて、建物の設計をコンペで選んだり、窓の大きさから位置、共有スペースの使い方まで検討を重ねながら建設を進めたという。

「これから住もうという人が、自分たちが暮らしやすく、快適なように考えた空間なわけです。バリアフリーはもちろん、木のぬくもりを感じる室内も、窓から見える景色も、まさに理想的なシニアの住まいに思えました」

もう一つ、久田さんの心をとらえたのが冒頭でも述べた“自由さ”だ。筆者が父の転居先を探すときに感じたのだが、高齢者向けの施設の多くは、「何かあったら困る」といった理由で、入居者の生活を細かく制限しがちなのだ。

「外出先で転んだら大変だからと、散歩も自由にできなかったりね。でも人間って、倒れ伏すまで自分の足で歩く自由があるはずでしょう。ここでは、入居者の行動はほとんどすべてが自己責任。参加型といって、たとえば運営方法などを入居者がスタッフと同じ目線で話しあう懇談会があるといった姿勢にも共感が持てました」

居室の広さは約10坪、14坪、20坪の3タイプ。気になる費用は、家賃一括前払金として1175万~2489万円を払えば、一生そのまま住める終身建物賃貸借契約という仕組みだ(15年以内に退去する場合、居住年数に応じて返還金制度も)。その他に月々の費用として、共益費が約8000円、見守りなどのサービスを受けるサポート費が約3万~5万円、食堂で予約して食べる昼食・夕食代と、部屋の光熱費や通信費などが別途かかる。

季節の花が咲く広い敷地に戸建て風の平屋と2階建ての建物が約30棟(70戸)点在している

 

建物は外壁から床や柱などの内装まで地元産「八溝杉」の無垢材を使用。引き戸の上にある欄間を開けば、涼しい風が吹きこむため真夏もエアコン要らずだそう

 

美味しい食堂はあるものの、「料理もなるべく作ってほしい」という方針で広々と使いやすいキッチンが

 

一棟ずつ独立した建物は窓が多く、バスルームにも明るい光が射しこむ