親子で一緒に練習を重ねて
「身体の力を抜いて、左足に五・五の力を入れて、反対の右足には四・五の力をかけてごらん」。
ステップワークを教えると、尚弥の目がギラリと輝き、稲妻のような踏み込みを見せた──わけもなく、ふにゃふにゃとした動きでした。
弟の拓真も幼稚園が終わると練習に交じるようになりました。当時は賃貸マンションでしたが、一部屋を大きな鏡を置いたトレーニングルームにしました。その鏡の前でステップの練習をするのです。
「打たれないためにまずはステップの練習だ」。
15年前のあの日から、親子で一緒に練習を重ねてきました。
尚弥の背丈は自分の腰にも満たなかった。拓真はさらに頭一つ小さかった。その小さな兄弟が小さな拳でジャブやストレートのようなものを日が暮れるまで放っていました。
※本稿は、『努力は天才に勝る!』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。
『努力は天才に勝る!』(著:井上真吾/講談社現代新書)
優れたコミュニケーターである著者が、いかにして2人の息子をチャンピオンに育て上げたのか、その秘密を余すところなく語る。ボクシングファンだけではなく、ユニークな子育て論、親子関係の参考書として、世の親御さんたちにぜひとも読んで頂きたい1冊