「親も歳をとってだらしなくなったとか、認知症なんじゃないか等と決めつけず、まずは確認することが大事なのだと思い知らされました」

これ以上洗濯物を増やしたら申し訳ない

母の介護は、ヘルパーさんやケアマネジャーさんはもちろん、富山の親戚と地域の皆さんの支えで成り立っています。なかでも大きな力になってくれているのが、母の実家にあたる旅館を継いだ、母の実姉のお孫さんのヒトシくんです。10歳下のヒトシくんは、私にとっては息子のような存在。大きくなってからも、彼が受験で東京に来たときは我が家に泊まるなど、家族同然の交流が続いていました。母が倒れたときに連絡をくれたのもヒトシくんで、本当に彼のサポートがなかったら遠距離介護はできなかったと思います。

『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(著:柴田理恵/祥伝社)

もちろん私も任せきりにするのではなく、休みには会いに行きますし、ヘルパーさんやケアマネジャーさんにも「直接母に言いにくいことがあったら私に連絡してくださいね」と伝え、できるだけコミュニケーションを密にするよう心掛けています。

あるときこんなことがありました。ケアマネジャーさんに電話して「何か母に変わったことはありませんか?」と聞いたところ、「服を着替えたがらず困っています」と言われたのです。きれい好きな人なのにどうしちゃったんだろうと驚いて母に確認したところ、「よっちゃんに悪いから着替えない」と言うではないですか。

この「よっちゃん」というのはヒトシくんの奥さんで、母の洗濯物を引き受けてくれている人です。母は「子どもが2人いて大変なのに、これ以上洗濯物を増やしたら申し訳ない」と遠慮して、着替えるのを控えていたのです。よっちゃんはよっちゃんで「私の洗濯の仕方が良くなかったのかしら……」と気にするなど、双方が気を使っていたことがわかりました。

そこで私から母に「よっちゃんが『私の洗い方が悪かったから』って気にしてたよ?」と伝えたところ、「そんなわけないじゃない!」と、ちゃんと着替えるように。親も歳をとってだらしなくなったとか、認知症なんじゃないか等と決めつけず、まずは確認することが大事なのだと思い知らされました。

――この対応、実は私の友人からのアドバイスなんです。「もしかしたらお母さんなりの理屈があるかもしれないから、遠回しに聞いてみたら?」と。親子だと「なんで着替えないのよ!?」みたいについ口調が厳しくなって、ケンカに発展しがちです。その友人にも似たような経験があったため、そんなふうに言ってくれたんですね。そうしたら本当に母なりの理屈があった。子どもが決めつけてはいけないのだと反省しました。

母・須美子さんとワンちゃん(写真提供:柴田理恵さん)