心配の96パーセントは無駄

だが、世界的な作家でライフコーチでもあるアーニー・ゼリンスキーは、『スローライフの素602』(井辻朱美訳、ヴォイス)で心配について次のように述べている。

「われわれの心配の40パーセントは、決して起きない出来事に対するもの、30パーセントは、すでに起きてしまった出来事に対するもの、そして22パーセントは取るに足らないことに対するもの、4パーセントはわれわれが変えられないことに関するもの、そして4パーセントだけが、われわれが働きかけることのできる物事に対するものだそうです。つまり心配事の96パーセントは、コントロールできない物事に対する心配だというわけ。心配の96パーセントは無駄だということになりますね」

『「大人」を解放する30歳からの心理学』(著:キム・ヘナム・渡辺麻土香/CCCメディアハウス)

心配がどれほど無駄なのかは、こういう質問をしてみればわかる。

「1年前の今日、どんな心配をしていたか覚えていますか?」

人は大抵3日前に何を食べたかすら覚えていない。

これに関して19世紀のドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、人の記憶に関する研究の中で「忘却曲線」という理論を残した。

時間の経過に伴う記憶の損失程度を研究したのだ。エビングハウスは、「子音、母音、子音」で成り立つ無意味なアルファベット3文字を被検者に覚えさせ、その記憶がどれくらいで失われるかを調査した。被験者は20分もすると覚えた内容の42%を忘れ、1時間後には56%、30日後には79%を忘れた。

つまり人は、たった1か月で覚えた内容の80%近くを忘れるのだ。

では1年後はどうだろう? もしかすると、ほとんどの人は「何かの実験をした」という程度しか覚えていないかもしれない。

人はそれだけ簡単に忘れる「忘却の生き物」だ。したがって今は深刻に悩んでいても、1年後に振り返れば何を悩んでいたかさえ忘れている可能性がある。

だとしたら、余計な心配で人生を無駄にしないためには、どうしたらよいのだろう?