本場のコンテストで初受賞を果たして
僕は現在、ディジュリドゥ奏者、そして画家として活動しています。点描画は、2009年に交通事故で脳を数ヵ所損傷したことで高次脳機能障害となり、そこから描き始めました。それまで、絵など描いたことはなかったのですが――。
ディジュリドゥはオーストラリアの先住民族アボリジニが儀式などに使う伝統楽器で、世界最古の管楽器とも言われているもの。出会ったのは1994年、21歳の時。大阪のダンススタジオで見かけ、「面白そうやな」と興味を持ちました。
ディジュリドゥを演奏するには、循環呼吸といって、絶え間なく鼻から空気を吸い、口の中に溜まる空気を吐き出し続けて音を出す必要があります。難しい奏法だと言われているけれど、試しにやってみたらなぜかすぐにできてしまった。
同時に、ユーカリの木でできた楽器を口に当てると、なんともいえない気持ちよさを感じて。直感的に「この楽器をやってみたい」と思い、独学で練習することにしたのです。
その頃の日本にはディジュリドゥに関する情報はほとんどなく、古本屋でオーストラリアの本や雑誌を探しては、広告を手掛かりに現地のレコード店に手紙を書いて、CDを送ってもらうしか知識を得る方法はありませんでした。これでは埒があかず、本場で修業するしかないと、98年にオーストラリアのダーウィンへ向かうことに。
ダーウィンにはディジュリドゥの専門店があり、毎日通ってオーナーと話しているうちに働かせてもらえることになりました。とにかく初めて聴いた本場の演奏は衝撃的で。
そもそも大自然の中で奏でるものだし、人々の魂をかき立て、悪いものを退散させたりするために儀式で吹くものだから、西洋の音楽の概念に当てはまらない。独学でやってきたものとはまったく違い、一からやり直すしかないと決心しました。