掠めていた不安や心配
自信に溢れ、涙一つこぼさずキラッキラの笑顔で家を出て行ったのを見て、
「何かあっても、この子ならどうにか乗り越えてしまえるんじゃないか」
と思えたのだけれど…
心の片隅でチラッとでも掠めていた不安や心配は、このあと一つ一つ現実に起こり始めた。
何より翔大が最初に向き合わねばならなかった厳しい現実は、中学の時から抱えていた腰の怪我だった。思いのほか癒えない痛みを抱え、焦る思いやかばう動きが、更に次々と余計な怪我を呼んでしまっていた。
これも「もしかして」と思っていたことの一つなのだが、最初翔大は怪我のことを、私や父親にしばらく話さなかったのだ。
今練習終わった、学校に着いた、家に着いた、夕飯食べ終わった…そんなことは逐一電話してくるのに、メディカルチェックで腰の怪我を指摘されて全体練習に参加できていなかったことを、私たち親には一言も言わなかった。腰の状態は中1の時から危ういと言われて工夫してやっていたのだが、コロナで試合ができなかった時期も痛みを隠して練習を続けていた時から、本人の高校への期待や希望が膨らむ一方で、腰はずっと悲鳴をあげていたのだ。