準備については、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士とご夫人が、ストックホルム事情などを伝えたいからとご連絡をくださって、先週2人でご自宅を訪問したよね。

 あれは本当にありがたかった。

 私の一番の心配事が晩餐会の後のダンスだったんだけど、出なくてもいいと聞いて安心したし。あと、晩餐会ではトイレに行けず、4時間我慢しなくてはいけないとか。

 あと、日本へのお土産は何がいいかも教えていただきました。定番のメダルチョコと、紅茶がおすすめのようです。

 

産業界の立場から語れることも

 これから先、私には常に「ノーベル賞受賞者」という肩書がついてまわります。その責任は大きい。最近よく言われるのが、基礎研究に予算がつかないという問題。これを大学関係の方が言うと、身内のことをグチグチ言っているように聞こえちゃうけど、産業界の立場から語れることもあるかと。それから環境問題への取り組みに対して、具体的な方策を出す役割を担っていると考えています。

今回ノーベル賞を受賞した理由は2つあります。1つは、モバイルIT社会を実現することに貢献した。これは過去のこと。もう1つは、リチウムイオン電池は地球環境問題に対して答えを出していく有力なアイテムだと。こちらは進行形だし、未来形です。

そう考えると賞をいただいた責任として、後進に刺激を与えることも含め、地球環境問題に対して具体的な答えを出していかなくてはいけない。

 家では本当にふつうの夫であり、よき父親です。こんな大きな夢と責任感を背負って生きてきたことを、ノーベル賞のおかげで知ることができた。正直まだまだ実感がありませんが、ストックホルムに行けば、きっとそのことがずしんと身に染みると思います。