「ひとりでも家族といても、人が生きていくうえでの不安って変わらないのではないでしょうか」(稲垣さん)

 

長生き時代、高齢シングルが増える

小谷 2020年の生涯未婚率を見ると、50歳時点で結婚していない女性は約18%。ここには離婚してひとりになったバツイチや、私のように配偶者を亡くした《没イチ》は含まれないので、シングルで一生を終える女性の数はもっと多い。90歳を超えて生きる確率は男性が4人に1人、女性は2人に1人以上です。

吉永 長寿時代、しかも男性より長生き傾向の女性は、最終ステージでシングルになるケースが多くなりますよね。

稲垣 そもそも私は雑誌で「おひとり様企画」が人気と聞いても、どうも解せなくて(笑)。ひとりでも家族といても、人が生きていくうえでの不安って変わらないのではないでしょうか。

吉永 理由はいろいろあれど、ひとりになって迎える老いをうまく想像できないからかもね。

小谷 老後の不安には「健康とお金と孤独」の3つがあると言われています。とくに専業主婦は年金も少ないし、夫が亡くなると老後は経済的に困窮するのでは、という心配もありますね。

吉永 不安は、漠たるままで放っておくと際限なく膨らんでいく。《おんぶお化け》みたいに背中に引っついてくるから、その正体が何なのか、客観的に突き詰めたほうがいいと思うのよ。

小谷 先日ある講演会の質問コーナーで、「死ぬのが不安ですが、どうしたら解消できるでしょう」と聞かれました。人間いずれ絶対死ぬんだから、そこは諦めるしかないですよね。

じゃあ、不安の原因は何か。「死後はどうなる」といった哲学的なことを考えたいのか。それとも「散らかった家を家族に片づけさせたくない」といった、実務的なことが心配なのか。そこからまず整理しましょう、とそのときはお答えしました。