帝のたしなみ

一般に、複数の女性との結婚や恋愛関係にある男性貴族は、女性たちとの関係に悩みました。

帝(みかど)の場合は、それぞれの臣下が後宮へさし出す姫君たちを妻として迎えることが、ひとつの義務でもあったわけですから、こうした関係をどのように保つかは、帝としての振る舞いにかかわる道徳のようなものとなっていました。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

そこで大切にされたのが、それぞれの女性たちが互いに争いや嫉妬の感情をおこさないように、女性の身分に応じて愛情の程度を振り分けることでした。

さらには、どの女性をも満足させられるような、理想的な男性であることが帝のたしなみとして求められました。