必ずしも企業成長に結びつかない

これは顧客満足のジレンマと呼ばれ(佐藤2005)、ある時点の満足達成が、次の時点の期待水準を高めてしまうところに本質的な問題がある。

『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(著:満薗 勇/中央公論新社)

現実には企業間競争も行われるから、顧客満足の追求をめぐる活発な競争の展開が、市場全体の顧客の期待水準を引き上げることになる。

したがって、顧客満足の追求は、必ずしも企業成長に結びつくものではなく、時間軸で見ると個別企業の持続的成長を難しくしていく。

この限界を乗りこえるには、相応の画期的なイノベーションが必要となり、先に挙げた企業はまさにその成功例と言えるが、競争のなかでその優位性が長期に発揮される保証はない。

さらに、顧客満足の追求には、当事者以外に負担が及ぶ外部不経済の問題があることも知られている(宮崎2011)。

個々の企業が、それぞれ顧客満足の追求に焦点を当てるがゆえに、その周辺や第三者に生じる不利益や不満足に関心が及びにくくなってしまう。