観光客が増えることで発生するダメージについて、しっかりと検証する必要があるのでは――
京都を訪れた息子さんから、柄の悪い外国人が大騒ぎしていた様子を聞いたというマリさん。フィレンツェに住んでいた時には観光客によるダメージを直接目にしていたそうで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

オーバーツーリズムの実態

観光客というのは増やすのも大変だが、減らすのも容易ではない。

イタリア屈指の大観光地ベネチアは、今年の春から夏にかけて、旧市街を訪れる観光客に1人当たり5ユーロ(約800円)の入域税なるものを徴収するという観光客数の抑制策を導入したが、効果はまったくなかったという声もあった。

金額をもっと高くするべきだという意見もあったようだが、観光客が減ってほしいと思うのは、そこで日常生活を送っている地元の人々であり、観光を収入源として生きている人々には正直ありがたいことではない。

年間の観光収入が559億ドルで世界第4位というイタリアの中枢に、どこまで地元の人々の声が届いているのかは不明だが、コロナ禍の経済的打撃から回復を図るためには、多少の無理や我慢が必要とされる現状を皆理解してはいるのだろう。