鮮やかに思い出せる姿
しかし、どこも怪我していなくてよかった。
そしらぬふりができるほど、上手な転び方をしたようでした。
もしかしたら、義母はこれまで、結構あんなふうに転んでいたのかもしれません。
万一、転んだときのことを考えて、手の届くところに支えになるようなしっかりしたものを確認しておく、と。
わたしはこのごろ、靴下などをはくとき、義母の上手な転び方をならって、手近に万一のときの支えになるような頑丈なものを確認してから、片足立ちになるようにしています。
わたしは、今もはっきりと、物干し場でひらひらと転んでいった白いカッポウ着姿の義母を鮮やかに思い出すことができます。
あれは上手な転び方だったなあ。
※本稿は、『こんにちは! ひとり暮らし』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『こんにちは! ひとり暮らし』(著:みつはしちかこ/興陽館)
83歳、今はいない家族や友人を思い出しながらひとり暮らし。
『小さな恋のものがたり』『ハーイあっこです』の著者が、日々の暮らしについて書いた最新刊エッセイ。