経済ジャーナリストの荻原博子さん(右)と、わずかな年金収入で楽しく暮らす紫苑さん(左)(撮影:大河内 禎)
工夫を凝らし、わずかな年金収入で楽しく暮らす紫苑さん。小誌連載「トクする!マネーNEWS」でお馴染みの荻原博子さんと、同世代ならではのお金に対する価値観の変化などについて語り合います(構成:内山靖子 撮影:大河内 禎)

節約生活のおかげで別人のように健康に

荻原 このところの物価高騰や増税で、私たちの暮らしは苦しくなる一方です。これまでと同じ生活をしていると支出はどんどん増えていき、年金の額は変わらないのに同じ生活を送れなくなっていますよね。

紫苑 それは私も実感しています。買い物に行っても、「これもあれも値上がり?」と驚いてばかり。電気代やガス代も高くなりましたし。

荻原 貯金を取り崩すしかなく、老後資金の不安を抱えている人も多いでしょう。でも、紫苑さんの著書を拝読すると、月5万円の年金だけで楽しく暮らしていらっしゃる。心の豊かさはお金の多い少ないに比例しないと感じます。

紫苑 いえいえ、もともと私はお金に無頓着で、「節約」とは正反対の暮らしをしてきたんです。40代の初めに離婚し、シングルマザーとして2人の子どもを育てましたが、仕事はフリーランスだったので収入が不安定でした。

それなのに、たまに大きな収入があると、趣味の着物を山ほど買ったりして。無謀にも、家賃24万円の高層住宅に住んだこともありました。

荻原 私たちが若かった1980年代は、日本経済が右肩上がり。「いくらお金を使ってもまた入ってくるから大丈夫」という金銭感覚の人が多かったですよね。そこから一転、なぜ節約に励むことができたのですか?

紫苑 60代になって仕事が先細りになっていたところにコロナ禍が始まり、60代後半には仕事がゼロになってしまって。収入は月5万円の年金のみ。当初は不安のあまり眠れないこともありましたが、いくら悩んでもお金が増えるわけではありません。腹をくくって、節約生活に前向きに取り組むことにしたんです。

60代半ばに貯金をはたいて、築40年の小さな中古住宅を購入していたため、家賃がいらないのが不幸中の幸いでした。