石板の文字
騎士は石板の文字を読む。
そこには、「左に行けば富を、右に行けば妻を、まっすぐ行けば死を得る」と記されている。
カラスが低く飛び、石板を墓石のように感じさせる。
それを補強するかのごとく、手前の草むらに人間と馬の頭蓋骨がころがっている。
愛馬はうなだれる。騎士の迷いを察知したからだろうか。
それとも戦場での死を覚悟した騎士の心を知ったからだろうか……。
※本稿は、『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(著:中野京子/中央公論新社)
ちょっとした知識があれば、隠された画家からのメッセージを探りあてることができる。
「見て・感じる」だけではわからない、絵を読み解く手がかりをテーマ別に解説。
この本を読めば、鑑賞体験はもっと豊かなものになる。