ラファエロ・サンティ『騎士の夢』(部分)<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>
長きにわたって人々に鑑賞されてきた西洋の名画には、薔薇やリンゴなど、よく描かれるシンボルがあります。このようなシンボルについて、ベストセラー『怖い絵』シリーズの作者であるドイツ文学者の中野京子さんによると「ちょっとした知識があれば、隠された画家からのメッセージを探りあてることができる」とのこと。そこで今回は、中野さんの新著『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』から、西洋絵画をより深く読み解く手がかりを一部ご紹介します。

分かれ道

「岐路に立つ」という言葉がある。岐路とは道が分かれる場所だ。

人生の、運命の、重大な分かれ道に立ち、どちらを選ぶか決断を迫られる状況が比喩的に表現されている。

さまざまな絵が描かれてきた。ラファエロ作『スキピオの夢』(別名『騎士の夢』)が、小型ながらよく知られている。

ラファエロ・サンティ『騎士の夢』1504年頃 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)蔵<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>

古代ローマ軍の甲冑を身につけた若い騎士が、道端でうたた寝している。

上半身と下半身を分けるかのように、彼の背後には細い木が立つ。

右(足元)には着飾った美女がいて、ギンバイカの花を差し出す。背景は豊かな田園だ。

一方、左(頭部)には質素な身なりの女性が正義のシンボルの長剣と書物を持ち、背景は険しい山岳。