若者への教訓画

夢の中で騎士は迷っているのだろう。

いや、現実に迷っていたからこそこんな夢を見たのだろう。

『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(著:中野京子/中央公論新社)

快楽と富裕が約束された生活を送るか、文武両道の騎士となるべく厳しい研鑽(けんさん)を積むか。

楽な道か、過酷な道か。これは若者への教訓画でもある。

似たような状況で主人公だけが別人、という絵を、イタリア人画家アンニーバレ・カラッチが『分かれ道のヘラクレス』で描いている。

アンニーバレ・カラッチ『分かれ道のヘラクレス』1595-1596年 カポディモンテ美術館蔵<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>

ギリシャ神話の英雄が「悪徳」と「美徳」の間でしばし迷う図である。

日々刻々決断を下さねばならない戦士こそ、このテーマの主人公にふさわしいと思われているのだろう。