孫との再会を待ちわびて
2022年の侵攻後、ウクライナ・ロシア間にあった国境検問所はすべて閉鎖された。だが1ヵ所、北部の町スーミィのポクロフカ検問所だけは、ウクライナのパスポートを持つ市民が今も、ロシア側から越境することができる地点だ。
南部や東部のロシア軍支配地域から逃れてきた住民は、ロシア経由でこの検問所を目指す。ロシア側の検問所では警備官と情報機関が越境するウクライナ人を尋問するものの、通過自体は認められている。ほとんどが高齢者や女性、子どもであることもその理由のひとつだ。
毎日、数十人が、国境の2キロの砂利道を歩いてウクライナ側に入る。越境してきた帰還民は、支援団体のミニバスでスーミィ市内に向かい、警察が記録調書をとる。
2月下旬、国境検問所から帰還民を運ぶミニバスに、私も同乗させてもらった。この日の午後、国境を越えてバスに乗り込んだのは7人。隣に座る夫の手をしっかりと握りしめていたのが、イリーナさん(64歳)だった。