早稲田大学に入学して、すぐに「劇団 暫(しばらく)」に参加するその経緯が、いかにもおっとりとした平田さんらしい。
――キャンパスをふらふら歩きながら、いろんなサークルの新人勧誘も屋台もほとんどなくなって、みんな落ち着くところに落ち着いたのか、誰も誘ってくれなかったなぁ、友達できるといいなぁ、と思ってたんですよ。
そしたらその日が千秋楽だという劇団暫の公演が始まっていたんですけど、立ち止まってじっと見ていたら、「入る? タダでいいよ」って。多分100円とか200円とかの入場料でしたけど、声をかけてくれたのが座長の向島三四郎さん。
入ってみたら、いろんなアングラ芝居のつぎはぎで、別役(実)さんとか、唐(十郎)さんとか、寺山(修司)さんとかのコラージュでした。はぁ~、これが芝居か、何も知らなかったな、ってぼんやり思ってたら、「バラシを手伝えよ」って言われたので、やっぱりタダで見せてもらったんだからと手伝って。
そしたら打ち上げの宴会の場でも座長に「おぅ、隣に座りなよ」と声をかけてもらって。おかげで、座っているとみんなが飲み物を注いでくれたりして、いい人たちだな、と思ってね。
「じゃあ新人は明日どこそこの喫茶店に来るように」と言われて、僕も何となくそこへ行ったら、十人くらいの「新人」がいた。そのままズルズルと参加することになって、夏休みの新人公演に出たんですけど、どうも自分には向いてないなと思いましてね。