春たけなわの宴

その日は、天皇主催の桜の宴(えん)が宮中で催され、華やかな行事が一日中くり広げられました。

宴の中心的な存在は、やはり源氏で、観衆を前にして舞った「春鴬囀(しゅんのうでん)」の舞姿は、それは見事なものでした。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

またその日は、探韻(たんいん)がおこなわれました。

探韻は、紙に書かれた韻字を探り取り、その場で、その韻字を用いた漢詩を作り、声に出して帝に披露する催しです。

源氏の「春という文字をいただきました」という声が、美しく響きわたりました。

まさに春たけなわの宴にふさわしい催しでした。