実家は全焼、母親は介護施設へ。二重の支払いに苦しむ

その翌月の2月、Nさんは家を全焼させる火事を起こしました。

Nさんは火を消そうとして顔や腕に火傷を負い、入院。火は近所にまで燃え移り、延焼させられた隣家の住人は、子どもたちがNさんの監督義務を怠ったとして損害賠償を求めてきたのです。

(写真提供:Photo AC)

幸い、子どもたちに賠償責任はないと認められたものの、火災保険に加入していなかった実家の片付けにかかる費用約300万円、母親Nさんの入院費や隣家へのお詫びにかかる費用はすべて子どもたちが負担することに。

また住むところを失い、認知症状のあるNさんの一人暮らしは不可能であるとして、地方の特別養護老人ホームへ入所することも決まりました。

母親の火の不始末で、300万円の費用と毎月の老人ホーム費用17万円が3人の子どもたちの肩に重くのしかかりました。生活も一変、本業に加えてアルバイトをするようになった兄弟も。金策に追われる日々に、母親を恨む気持ちにもなったと言います。

しかし末っ子の長女だけは時々老人ホームに「お母さん、元気?」と会いに行くのだそうです。当のNさんは、なぜ自分が老人ホームにいるのかもわからず、「いつ帰れるの?」と尋ねます。そんなとき長女は「お家の修理が終わったらね」と明るく答えているそうです。