2023年に総務省が発表した「統計トピックス」によると、70歳以上の人口は2899万人でした。そのうち、75歳以上は2005万人と、初めて2000万人超えを記録。寿命が延びた今、歳を重ねてからの暮らし方は、以前よりも選択肢が広がっているはず。70歳、あるいは80歳を過ぎても、自分らしく、楽しく、元気に暮らすシニア12人に取材した『70歳をすぎたら、もっと 自分らしく食べて豊かに暮らす』より、葉山で飲食サービスや古民家離れ宿を営業する“桃花源“主宰の伊藤千桃さんの暮らし方について、一部抜粋してご紹介します(取材・文◎野中ゆみ 撮影◎後藤さくら)

レストラン『桃花源』の始まり

伊藤さんがこの家に暮らし始めたのは、約40年前のこと。

当時、東京で夫と幼い子どもと暮らしていたそうですが、葉山に暮らすお母様に介護が必要となり、通っているうちに子どもとともに移り住むようになりました。

その後、価値観のずれを修復できなかった夫とは離婚に至ることに。

「私は仕事をしていなかったので、子どもたちと生きていく術がありませんでした。ただ唯一持っていたのが、この家。母が『あなたは誰も頼る人がいないのだから、この土地だけは持っていなさい』と私に残してくれたのです」。そして伊藤さんはこの家で、土地で採れた食材を取り入れた料理を振る舞うレストラン『桃花源』を始めました。

『70歳をすぎたら、もっと 自分らしく食べて豊かに暮らす』(ナツメ社)