眉毛が運んでくれるチャンス、深まる悩み

自分ではまさか、眉毛がウケると思っていなかった。

ホリプロスカウトキャラバンで注目を浴びたし、中学生の時から散々イジられていたけど、「東京にはこんな眉毛の人はいっぱいいる」と思い込んでいたのだ。

井上咲楽
(撮影:荻原大志/写真提供:徳間書店)

だから、「眉毛の子」と珍しがられて、テレビ番組に出るチャンスが続いた時も「え!? 私の眉毛って、そんなに?」と半信半疑。これが武器になるなんて想像もしていなかったし、予想外だった。

高3の頃、『アウト×デラックス』(フジテレビ)や『アッコにおまかせ!』(TBSテレビ)『バラいろダンディ』(TOKYO MX)など、バラエティ番組に続けて呼ばれたことがあった。まさに、眉毛きっかけでのテレビ出演だったけど、トーク力がまったく追いつかない状態だった。

だから1回は呼ばれるけど、2回目の声はかからない。期待して呼んでくれたスタッフさんと収録後に顔を合わせるのが申し訳なくて、裏口からこっそり帰ったこともある。テレビの現場の大人の人たちは面と向かって「良くなかった」とは言わない。ただ呼ばれなくなるだけだ。その正直な残酷さが結構きつかった。

テレビに出られるのはうれしい。だけど、毎回うまくいかないから苦しい。

失敗体験が積み重なるし、マネージャーさんからは死ぬほど怒られるし、楽しくない。

私の感覚では、高校時代はもちろん、21歳くらいまではチャンスをもらっても、波に乗れないまま足踏みしている感覚だった。

眉毛のインパクトで、井上咲楽を認知してもらうスピードは速かったけど、実力が足りない。見た目のインパクト以上の何かを残せない。自分の実力不足に焦りを感じて、答えの出ない武器探しが始まっていった。